E8易経を読むー6 和合・発展と安泰〔11〕地天泰  離反・閉塞と打開〔12〕天地否

11〕地天泰(ちてんたい)000111上下和合して発展し安泰となる
天が下にあり地が上にある天地逆転の象形ですが、天の陽気は上昇し、地の陰気は下降する性質があります。
天と地、陽と陰が結びつくことは、万物生命が生まれるための大原則です。そこで地天泰は上下和合して発展する「安泰の道」を説く卦です。

上が下を慈しみ下は伸び伸びと発展を目指して活動する象形で、理想の社会ですが、陰陽逆転すれば次の天地否となり、上が私腹を肥やして民が苦しむ世の中ともなります。
表裏一体、天地逆転も真なりです。上下和合の安泰と上下離反する天地否は、立場や状況により見方も変わります。

人物でいえば、内面に溢れるほどの意欲をもってよく働き、外面は謙虚で柔順であるために、人に好かれ上にも可愛がられるので、一生食べるには困らないでしょう…とあります。半面年齢が増すと次第に従順でおとなしい性質が目立ち、良い人には違いないのですが、良い人で終ってしまう可能性もあります。

賢人は上下が和合して事が成就するため、時と目的に応じて創意工夫し利便を追求して下を助け働くのです。

互卦:雷沢帰妹(らいたくきまい)001011上下離反も初心を全うすれば吉となる
女性を柔順の陰とすれば、この卦は若い女性が力のある中年男性に逆にアピールする象形で、私利私欲や功利的な結びつきを示します。そこで凶・否運であるとしますが、道ならぬ恋もやがて皆が認めるようになり、全うすれば吉となるのです。
安泰の卦の中に注意を促す互卦なので、例え優遇されても努力を怠らず、慢心すれば否運になるぞと戒めているのでしょう。

錯卦:天地否(てんちひ)111000 因果関係・上下離反と打開の道
天の陽気は上に、地の陰気は下にいくことから、上下が容易に結び付けない困難な状況です。上は私腹を肥やして民を顧みず、民は不平不満を溜めてやがて徒党を組む団交の始まりです。上の立場からは困った状況で、徒党を組めば低きに流れて否運に陥るぞと警告します。
しかし現代は若い女性が力のある中年男性を射止めるのも当たり前で、まさに逆転の天地否時代です。でも終わりを全うすれば吉となるのも同じです。
打開の道は、初心を貫き努力を続け全うすることです。やがて結実するように、実力を認められ安泰の時を迎えます。

綜卦:天地否(てんちひ)111000 安泰の構図も時とともに逆転する
始めが順調なら…始めが苦労なら…という違いでは人の未来はわからないもので、安泰でも否運に陥り、否運でも安泰へ向かう道があり、天から見れば時の巡りなのです。

12〕天地否(てんちひ)111000 結実の道は容易ではない。初心を全うして吉
天地否は111000、地天泰は000111で上卦と下卦が逆転した象形です。 地天泰が内面に陽気を秘めて謙虚で柔順な人ならば、天地否は若い時に苦労の連続でも実力を磨きやがて頭角を現す人々でもあり、実力もないのに虚勢で飾り、したたかに翻弄する人々ともなります。前者はやがて安泰になり、後者はいずれ否運となればよいのですが…

社会は支配層が私腹を肥やして、民が困窮する象形で、自然界は花が枯れて根幹の枯渇が進む中でようやく結実していく状況です。このような上下の結び付きが容易ではないことを否運とし、困難でも持続し全うすることで打開するのだと説きます。
困窮した民は一揆(ストライキやデモ)に走りますが、支配層から見れば民が徒党を組むことは大変困るので、この卦を凶としたのも頷けます。
実のところは安泰も否運も表裏一体で見方を変えれば、同じ目安なのです。

賢人は人々の苦しみを見て、行いを慎ましくして難を避け、金品(高禄)に惑わないように努めるのです。

互卦:風山漸(ふうざんぜん)110100 順を踏み着実に進化する道。実力養成。
地天泰の互卦、雷沢帰妹が順を踏まずに上位を望む卦なら、天地否の互卦の風山漸は順を踏み、着実に力をつけて進化伸展することを示します。
例え否運に苦しんでも、初心の志を忘れず着実に力を養えば必ず成功に導かれると説きます。

雁のひなは、親鳥に随い徐々に飛ぶ力を覚え、練習を積み重ねてやがて親や仲間と共に千里を渡ってゆきます。また遠い山の木の生長は日々目には見えませんが、いつの間にか枝葉を伸ばし太くたくましく育っていることにも例えます。

逆境や苦境を嘆いて努力しなければ否運となり、黙々と努力して実力を養えば道は開け安泰となることを示します。

錯卦:地天泰(ちてんたい)000111因果関係・和合と安泰の道
否運を嘆かず、努力を続ければやがて安泰の時が来る。

綜卦:地天泰(ちてんたい)000111天から見れば時の巡り
春の草木の成長の結果が秋の結実をもたらす。時のめぐりを信じてその使命を全うすればやがて発展の時が訪れる。

〔解説〕

互卦は卦の中身であり、注意すべきことを説きますが、安泰の卦、「地天泰」の互卦「雷沢帰妹」は、恵まれていても努力なくして実りを追えば否運となることを示し、否運を示す「天地否」の互卦「風山漸」は、苦しくとも初心を持続して実力を養えば安泰となることを示します。

地天泰は温かな春にすくすく伸びていく若い幹であり、天地否は秋の結実に向かう老成した幹です。春は気候や環境に恵まれて栄養も十分ですが、花が枯れて実がなる秋は、相当根も疲れて栄養も十分ではありません。でも実がならなければ、次世代の種子を残せませんので、草木は頑張っているのですね。

そのような見方から、安泰も否運も時の巡りであり、時に応じて注意すべきこと、努力するポイントを説くものです。
季節のように時代は巡り、順調な時も苦しい時も必ず終わりが来ます。
安泰も否運も表裏一体、因果関係にあり、その時に応じ、その立場に応じて、慢心せず、あきらめず、初心や志を全うすることの大切さを説いているのでしょう。
現代はまさに困窮する民が増加して貧富の差が増す天地否時代の様相です。
民の苦労は続きそうですが、上の立場の方々が民と苦労を共にする賢人であってほしいと願うばかりです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です