E10 易経を読むー8 繁栄を持続するために〔15〕地山謙〔16〕雷地豫

〔15〕地山謙(ちざんけん)000100 繁栄を持続する道・謙虚公平であれ

繁栄を示す火天大有の後に続くのが地山謙。文字通り謙虚・謙譲・謙遜を説き、成功した後こそ私欲や慢心を抑えて、周囲にお返しをする気持ち、奉仕の精神が大切と説きます。

誰でも築いた繁栄を長く持続したいと願いますが、行動は奉仕とは程遠い私利私欲に走り、自分の財産や名誉や権力を増やし守ることに汲々とすることが多いのです。名誉や地位、才能や美貌などは謙虚さがあってこそ光るものです。
実るほど頭を垂れる稲穂のように謙虚であれば、信頼され敬愛されて繁栄が長く保たれるでしょう。

賢人は終わりを知り、満つれば欠ける道理を知って、繁栄の後こそ下に厚く、弱者を守り、謙虚で公平に振る舞うのです。

互卦 雷水解(らいすいかい)001010 注意点・時のめぐりを知る
解は解ける、解消、解決のこと。自然界では春が訪れ雪が解けて生命の活動が一斉に始まる。繁栄に終わりあり、暗闇も冬の寒さもまた時が巡り、夜明けや春が来る。謙虚に努力しても繁栄に陰りが訪れ、苦難の時もあるが、周囲の信頼と敬愛を失わず機を持てば解消する時が来る。

錯卦 天沢履(てんたくり)111011  因果関係・実行して切り開く時が来る
果敢に行動し実行しなくては道は開けない。社会は厳しいが、先人への礼を尽くし秩序を守り、謙虚に行動すれば、たとえ失敗しても許され、逆に守られる。

綜卦 雷地豫(らいちよ)001000 天の教え・予見して警戒し備えて余裕をもつ
繁栄の時もいつか終わり、また動けない辛抱苦労の時もくるが、やがて解消し元気に活躍する時が来る。
良い時にはあらかじめ警戒し備えを整え、悪い時も焦らず慌てない余裕が大切。
悠悠自適は常に警戒と備えにより保たれる。

 

〔16〕雷地豫(らいちよ)001000 悠悠自適への備え

豫は予見、予裕、予断を意味します。また「あらかじめ」でもあり、予裕の中で遊び楽しむのは良いとして、慢心し油断すれば思わぬ失敗をするから、あらかじめ警戒を怠るなと説きます。

困難な状況では我慢辛抱はできても、時期がきて行動しなければ好機を逃します。余裕とは、常に警戒を怠らず備えた中にあり、備えあれば憂いなしです。
繁栄の時代にも季節のような波があり、常に下を労わり、謙虚で公平であれば人の心が離れず、共に苦しい時を乗り越える力となります。また新たな発展の時を予見し、好機が訪れた時は溜めた力を大いに発散することでまた発展できるのです。

運勢の波の動きに翻弄されず余裕を持ちすごすために、常に警戒と備えを怠らないことが大切と説きます。賢人は常に警戒し備えを怠らず、変化を予見して行動を起こすことができるので、悠悠自適に人生を楽しめるのです。

互卦 水山蹇(すいざんけん)010100 注意点・焦らず急がず無理をしない
蹇は足が止まること。バランスが崩れ行き悩む状況が訪れる。前途を塞がれるが、無理に動かず、見識ある人の意見を聞き、遠回りでも平易な道をゆっくりと進むことが大切。
動けない時は静かに我が身を振り返り、内面を整え修養して時期を待つことだ。

 錯卦 風天小畜(ふうてんしょうちく)110111 因果関係・まだ大事を行うには力不足
畜は蓄え留めること。小畜は蓄えが小さく大きな力を留めることはできない状況。
春がきて伸びる芽はまだ若く力がない。力の弱い者が強い者に勢いや意欲だけで立ち向かっても勝てない。
成長力のある時こそ、学び励んで内面を強く鍛え、力量を蓄積することが大切。

綜卦 地山謙(ちざんけん)000100 天の教え・謙虚で公平であれ
繁栄も衰退も繰り返すのが天のことわり。成功をつかみ繁栄の時にこそ、弱い者を労わり謙虚で公平であることが大切だ。
繁栄を長く持続するのは困難だが、謙虚さを保てば、山あり谷ありの時を乗り越えて長く支持され、また良い時を迎えることができる。

 〔解説〕
地山謙と雷地豫の二卦は、成功した後こそ人の内面の美徳を発揮することが大切と説いています。賢人は繁栄と衰退は繰り返すことを知っているのです。

世の中には成功をつかむと別人のように偉そうに振る舞う人がいて、私利私欲に走り益々力を拡大するために、冷酷にさえなる人がいます。

歴史の物語は、民衆の支持を得て戦い、変革を起こした後に権力を握ると、その力が千年万年も子孫に継続することを望む繰り返しです。

繁栄と衰退は繰り返し、いつか訪れる終わりを知る人は、驕らず高ぶらず謙虚に公平に励みます。そして衰退と苦境の時を乗り越えて、また発展の時を迎えられるでしょう。穏やかに時には激しく変わる時代の波の中で、民を慈しむ賢人が治めた良い時代もあります。でも時が巡り人が変わり滅亡の時は必ず訪れ時代は変化していきます。

そんな歴史物語の中の民衆は、誰が権力をもとうがそう期待もせず常に警戒し、日々の小さな楽しみに憩い、今日の糧のために励み、肩を寄せ合って苦難をしのぎ生きてきた、強い心の人たちだったのではと思えるのです。

本当の悠悠自適の生活は、権力をもつ人にはないのかもしれません…

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