E11易経を読むー9正しく随い、災いを福に転じる道〔17〕沢雷髄〔18〕山風蠱

〔17〕沢雷髄(たくらいずい)011001順応し正しく随う道

繁栄をつかんだ後に謙虚さと余裕をもち、あらかじめ警戒して準備することが大事と、この前の卦(15地山謙16雷地豫)が示していました。もし謙虚さを失くし警戒心を忘れたとき、人はどのようになるのか…

「沢雷髄」は上の沢が若い女性、下の雷は中年男性です。若い女性に中年男性が随っている形で、アンバランスで間違った方向に人が動いていることを示しています。

欲望を燃やして間違った方向に人が集まっていくとどうなるか…間違いなく世の中が乱れて衰運がはたらきだすでしょう。

この卦は秋の果実が実る頃の季節感ですが、秋は植物の成長が止まり根の枯渇が進みます。根幹から送られる養分で枝の実が熟成しますので、実の方は根幹の働きに任せて熟成を待つしかない状況です。

そこで互卦の「風山漸(ふうざんぜん)110100が徐々に順序を踏んで実力を養い進んでいけば、必ず着実に進展していくのだと注意を促します。

繁栄を築くために苦労を共にしてきた人を排除し、甘言に乗って間違った方向へ人が動けば衰退が進むのは当然です。それを責任ある中年男性が若い女性に夢中になって随っていると例えているのですね。

そこで陰陽逆転して因果関係を示す錯卦が「山風蠱(さんぷうこ)100110です。この卦は皿に虫が三匹乗っている象形で、食物に虫が湧くように腐敗が始まっている状態を表します。綜卦の天から見ても同じ「山風蠱」が見えます。

 

秋の果実が熟成を待つような時に、逆行を望んでも夏の繁栄に戻ることはありません。

築いてきた土台・根幹を守ることを忘れずに、環境に順応していけば、やがて熟した実を収穫することができるのです。

しかし今も昔も往々にして、成功すると慢心して衰退を早める人が多い、ということなのでしょう。でも早く気づいて対処すればまだ何とかなると次の「山風蠱」が教えます。

 

〔18〕山風蠱(さんふうこ)100110問題を処理して災いを除く

蠱は皿の上に虫が三匹のっている文字です。ウジ虫がわいてきているような状況ですね。

山風蠱の卦は山のふもとに風が吹き荒れて災害を起こす象形です。また山は若い男性で風は熟女を表しますので、今度は反対に熟女が若い男性を「蠱惑」する様子です。

この例えは、繁栄に慢心し謙虚さも警戒心も無くして進む道を誤れば、腐敗が進み世の中が乱れてくることを暗示します。

現実に、度々災害に襲われ、様々な問題が発生して多事多難に陥る時が来るもので、平和な繁栄の時代は長くは続きません。台風が襲い農作物に多大な被害を与えることは珍しい事ではなく、害虫が発生して収穫を台無しにすることもあるでしょう。

このような時に最も困窮するのは民、庶民です。そこで腐敗した状況を正して根に巣食う虫を退治するように、根本から解決することを望む民の力が改革の火種となることは歴史が示しています。

互卦の「雷沢帰妹(らいたくきまい)001011は、アンバランスな矛盾した状況は常に不吉な未来を予感させるものだと警告します。当事者は早く気づいて志を取り戻し、精神性を高めて永続するために努力すれば、「災い転じて福となす」こともできるのだと教えます。

因果関係を示す錯卦も天から見た綜卦も「沢雷随」で、順を踏まず道を誤れば腐敗が始まると警告しています。

「山風蠱」は災害や様々な問題を放置すれば、腐敗が進むことを教え、男女のアンバランスな関係に例えて、道を誤ったことに早く気づいて修正し、精神性を高めて適切に対処すれば、まだ何とかなる時期なのだと説いています。世の中が乱れて腐敗が進み、さらに様々な災難や問題が発生すれば、その被害は必ず庶民に及びます。そして根本からの変革を望み、改革へと時が動いていきますが、そうならないよう賢人は適切に対処し善処するので、なんとかなる時期なのです。

真摯に根本から解決するよう対処すれば、災いを教訓にして福(熟成の時代)に転じることができることを説く卦です。

今は戦後に始まった春から夏の時代が終わり、繁栄のピークを過ぎて様々な災害や諸問題が発生しています。沢雷髄・山風蠱の示す季節感とよく似ています。

人としても人生が華やかな時にこそ謙虚さを忘れずに、あらかじめ警戒して備え、誤った道に進まないよう、適切に対処していけば、熟成した人生が訪れる…そのために繁栄を築いてきた土台・根幹を守ることが大事なのですね。

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です