E12易経を読むー10機を見て動く〔19〕地沢臨、ものの見方〔20〕風地観

〔19〕地沢臨(ちたくりん)000011世に出るために、機を見て敏に動く

臨は元々上位から下位に在るものを見る意味でした。臨席や来臨などの言葉がありますが、本来臨は敬いを込めて使用するもので、このたびは臨席させていただき…などと自分で言うのは恥ずかしい事です。

下卦が二陽となり、植物なら土の中の芽があと少しで地上に発動する希望にあふれた状況です。

そこで、人も世に出るために頑張るのですが、何を頑張るかと言えば、初心の志(地雷復000001)であると互卦が示します。

隆盛であっても、季節感は現在の一月頃のため、まだ外界は厳しく安易に進めば滅びてしまいます。そこで出るタイミングがあり、機を見る慎重さは必要ですが、動く時は俊敏に行動しないとそう長く好機は続かないと教えます。

臨の始め(初爻)に咸臨(かんりん)とありますが、これは江戸末期に勝海舟の指揮の下、福沢諭吉等九十余名の若者が遣米使節として、始めて太平洋を横断した船・咸臨丸の名に使われています。咸は感応することで、大いなる志を抱き感応する同志が、新たな世界に臨む船出にふさわしい船名と思えます。

そして帰国後の勝海舟等は日本の新たな夜明けである明治維新に深く関わることになります。

反対は錯卦の天山遯111100で、退いて難を避ける意味があり、季節は夏の土用、ここを過ぎれば秋です。そこで初心の志は、機を見て敏に正しく実行しないと進展する時機を失うと忠告します。

賢人は目に見えない変化の兆しを感じとり、どこまでも下のものを導き包容することを願うのですが…伸びようとする変化の勢いを止めるのは容易ではありません。

〔20〕風地観(ふうちかん)110000物事を深く観ぬく力。物の観方。

観は単なる見方ではなく、凝視する、奥底まで見抜く観方です。地上に風が吹き荒れる象形ですが、世の中を治める人は八方の風をよく感じて、それぞれに応じて必要な政(まつりごと)を行うべきなのだと説いています。

観光というと今は物見遊山のような響きがありますが、本来、賢明な国王は国の光(繁栄)を観るために領地をくまなく巡行したことから、「観光」という言葉が生まれました。その時に人々の上辺の歓迎を見て安心する様なら賢明な王ではなく、表に出ない人々の苦しみや嘆きをその仰ぎ見る姿から見抜き(上観)、自ら天を仰ぎ人々の災いを除く祈りを捧げます。その姿を衆人が観て(迎観し)、柔順な心を失わず付き随うのだと説いています。

そこで上位の者が台頭する変化の兆しを見抜けないと、自らが剥がされるのだと、互卦の山地剝100000が警告します。また退くべき時を知り終息の時に備えることの教えでもあります。

観の卦は下の陰(大衆)が台頭して上の陽(支配者)を押しのけようという勢いがあります。

いつの世も民の苦しみが極限に近づく時が革命の兆しです。それを知らずに支配者が私利私欲に走り、栄耀栄華を尽くせば大きな革命が訪れるということですね。

因果関係を説く錯卦の雷天大壮001111は、逆に下から陽気が壮んになっている上昇の卦です。どのように壮んな勢いで繁栄を極めても、いつかは負の勢いが台頭してくるものです。でも自分の繁栄のために賢明に努力した日々を思えば、苦しむ人々の改革を望む勢いを想像することは可能です。若い力が伸びてくることは止めようもありません。

そこで別の解釈では、伸びようとする若い人々に深いまなざしを注ぐ良き指導者の姿でもあり、努力や苦しみを見抜く思慮深さにより人々を教え導くことができる人物像といえます。

賢人は奥深い観察眼を働かせ、それぞれの望みや苦難を見抜き、適切な教えを立てて導くのです。

 

〔解説〕

地沢臨000011と風地観110000の卦は天地(180度)逆転した綜卦の関係ですが、どちらも深く変化に応じて行動するというところで共通点があります。

臨は上昇する生命力で、機が熟せば自ずと世に出ていく若い力です。しかし大きな志を立てても、機を測り俊敏に行動しないと、好機は一転して衰退に導かれてしまうのです。また観は逆に熟成した大人の静かな力です。深く観ぬいて、衰退の兆しに早く気付き、自ら率先して模範を示し教え導くことの大切さを教えます。

例えとして、希望にあふれて誕生した玉のような女の子は、やがて可愛い少女に成長していきます。そんな愛娘を見て、見上げるような高見に昇る幸せをつかんでほしいと望むのが親心ですが、幼い時から蝶よ花よと甘やかすと、往々にして年頃になると不純な交友に走り、不良娘にもなりかねません。そのような失敗をしないためにしつけや教育が大事であり、親は正しく道を示すことが大切なのだという話にも共通します。

素晴らしい素質を、道を誤り台無しにしてしまうことはとても残念なことです。また素質を伸ばし教え導く人に恵まれることは幸せですね。

機会を自ら求めていくと同時に良い指導者に導かれることは、未来を大きく開くためにとても大事なことなのだと気づかされます。

 

 

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