E15 易経を読むー13 〔25〕自然の流れに従う 〔26〕真の実力者とは

〔25〕天雷无妄(てんらいむぼう)111001
時の流れに順応し従う時がある

无は無、妄は望、无妄は無望ですが、人生には予期せぬ出来事がしばしば起こり、期待通りにはいかないことがあるという意味です。また妄は偽りも意味していますので、无妄は偽りがない真実とも読めます。

突如雷鳴が轟き予期せぬ土砂降りに見舞われたときどうするか…自然には勝てず、雷雲が過ぎ去るまで安全な場所で静かに待つことが安心です。もし無理に進もうとすれば落雷の危険を負うことになります。
そこで天雷无妄は、予期せぬアクシデントが起きたときは極力動揺せず、ひとまず状況に順応し成り行きに応じて対処する道を説きます。

例えば干ばつや洪水などの天災に遭遇したとき、苦難に耐えて取り組んでいく民の姿があります。
人生には予期せぬアクシデントや苦境が訪れることがありますが、状況が修復し改善するまでは、苦しみに順応して耐えるしかないことがあります。
そこで互卦の風山漸(ふうざんぜん)110100が徐々に漸次進むしかない。静かに努力し力をつけていけば必ず大空をはばたく時が来ると励まします。

因果関係を説く錯卦は地風升(ちふうしょう)000110。地下の芽が地上にすくすくと伸びていく上昇の卦です。しかし新芽が大いにに進展するために必要な三つの条件があるといいます。それは①季節(時の利) ②養分や光(実力養成) ③良い土壌や環境(後援者、支持者を得る)の三つです。成功の条件、発展の法則ともいうのでしょうか。そこで賢人は時に順応して万物を養い育てることに努めるのです。

綜卦の山天大畜(さんてんだいちく)100111はその三つを大いに蓄積している真の実力者の卦です。天雷无妄は、予期せぬ出来事は時として起こるが、蓄積のない状況では無理に動かず、時流に応じて成り行きを見ることを説きます。无妄は無謀の戒めでもあります。そして漸次実力を養い三つの力を蓄えて真の実力者となることだと、次の山天大畜が説きます。

〔26〕山天大畜(さんてんだいちく)100111真の実力者となるために

山天大畜の対照的な卦が〔9〕の風天小畜110111で、蓄積が小さく大を留める力が弱いことを示し、大畜の方は蓄積が大きいので楽に小を留めることができます。

大畜は「大いに田が茂る」大豊作を示し、蔵に穀物が山積みされた状態です。

偉大な君主は大いなる蓄積を独り占めすることはなく、能力と実績に応じて広く分け与え、また常に有能な人材に門を開き、それを育成し養うことを惜しまなかったとあります。

大望を抱くなら、また大事を成すなら、まずは自分自身の実力や徳を養い、資金や人材を蓄え、物心両面の充実に努めてこそ、時に応じる力を持つ真の実力者となるのです。

互卦の雷沢帰妹(らいたくきまい)001011は、純粋でない政略的な男女の結びつきに例えて、利害損得による作為的な人の結びつき戒めて注意を喚起しています。純粋に有能有益な人を見極め、育成し養うことが大事なのですね。

因果関係を説く錯卦は沢地萃(たくちすい)011000です。山天大畜が大いなる蓄積を持つ真の実力者となる卦なら、沢地萃は水辺に草木茂るように、水場には渇きをいやしに自ずと人が集まる象形です。人が集まればそこに物のやり取りが生まれて交易が発展して繁栄がもたらされることを意味します。徳と実力が備わる人は水場のようで、自ずと人が集まり繁栄し、繁栄すれば蓄積が増えることになるという因果関係です。ある先生の易経の訳文に、沢地萃を「砂漠のオアシス」と説く名訳がありました。

 

〔解説〕

物事が順調に進展している時でも、予期せぬ出来事が生じることがあります。
それを突然の落雷に例えているのが天雷无妄の卦です。
芽が出ようとしているときに、地上をアスファルトで舗装されたら、芽には予想外のアクシデントです。以前「ど根性大根」が話題になりましたが、コンクリートのすき間に力強く成長した大根に、生命の強さたくましさを感じ取って、妙に愛しく感動したものでした。災害や人災なども含め、人は予期せぬ苦難に襲われることがありますが、個人の力が及ばない時は当面順応し耐えてしのぐしかないことがあります。

大きな災禍でなくても「人生は无妄のごとし」で予期せぬ出来事が起こるものです。

無理な時は順応して時流に逆らわないことが大切で、状況が回復すればまた新たな芽が伸びていく時がきます。人も苦難に順応する中で徳を磨き実力を養い努めれば、多くの人が集まり繁栄する時が来るのだと説きます。

時の利・実力・支援者が整う発展の状況です。

そして山天大畜に至り真の実力者となれば、その繁栄を大いに蓄積し、独占することなく能力に応じて広く公平に配分し、常に人材を育て養ったので、大事を成すときもまた有事のときも大いに力を発揮することができるのです。また繁栄を謙虚に感謝して、常に予期せぬ出来事に備え、不穏な動きに対して警戒を怠らないように心掛けるのも真の実力者です。

大きな国の状況から会社や小さな組織まで通用する、発展の条件のように思います。

 

 

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