E17 易経を読むー15 〔29〕苦難を乗り越える道〔30〕情熱と理性について

〔29〕坎為水(かんいすい)010010苦難を乗り越える道

坎=水で、坎為水は水が二つ重なる卦です。八卦では水は冬を表して、基本的に困難や苦境を示します。

易経で四大難卦といわれるのは、次の四卦でどれも「水010」がつきます。

  1. 水雷屯(すいらいちゅん)生みの苦しみ ②坎為水(かんいすい)次々苦難が襲う
  1. 水山蹇(すいざんけん)道が塞がれる ④沢水困(たくすいこん)干上がる

「坎為水010.010」は「水010」が上下に二つ重なりますので、次々に困難・苦境に陥ることを表して、洪水のような苦難に襲われて、成すすべもないような状況です。
当然このような苦難は、すぐに解決できるような問題ではありません。

易は、このような困難や苦境の時こそ、勇気と信念の力が必要で、苦労は人の心を鍛え磨いて新たな勇気を生む力となると励まします。

例えば古代から人は水辺に集まり、水の恩恵により生活を営んできましたが、半面水の猛威により多くの命や生活を奪われる苦難も度々経験してきました。
それでも、苦難のたびに心を鍛え励まして、知恵と努力で改善改革に取り組み、たくましく生き抜いてきたのです。

「水」は様々な苦難を示しますが、どのような時にも低きに流れる「水」の性質は変わりません。

この性質を理解して水を制する方法を研究し技術を磨き、堤防や水路や水門を造り、避難場所や住居を高台に設けるなどの工夫をしてきたのです。

大きな災禍や危難を克服するには長い道のりが必要です。一人の力では無理な事ですが、一人一人が信念と勇気をもって立ち向かう姿は、やがて尊敬と信頼を得て人々の心を結集させ大きな力となります。

人をけん引しリーダーとなる人たちの資質はとても重要です。

そこで賢人の君主は常に徳行を行い、人々の教育に専心し、「誠意誠実を尽くし、他を思いやり、激流に立ち向かう勇気と信念を培った」とあります。

常に高い徳性と優れた知識や能力をもつ人材を育成することが、長い目で有事の備えなのだということですね。

事が起きてから想定外、経験がないなどと言い訳し慌てる事が多いですから…

目先の利益を優先して過少に被害想定する人に随うのは不安です。正しい知識と能力で公正な見識を持ち、人命を優先する徳性をもつ人に随いたいと思うのは当然でしょう。

互卦の山雷頤(さんらいい100001)も「常に養心養生を怠らず体と心を鍛えて備えよ」と喚起しています。

 

〔30〕離為火(りいか)101101情熱と理性について

離=火で、離為火は火101が二つ重なる卦です。八卦では水とは逆に夏の盛り、輝く太陽や燃え盛る炎を表し、知性に溢れて、燃えるような情熱などを示します。その火が二つ重なるので、炎が飛び火して激し過ぎるきらいがありますが…

華麗な花の開花も火の世界です。華麗の麗は(つく)という意味があり、華は根に麗いて華麗に開花します。人も自分に根付いたある限りの知性や能力を発揮して活躍するような状況を、開花または成就・達成などと言います。

「日月は天に麗き(付き)、百穀草木は地に麗き(付き)、柔は中正に麗く(付く)」とあり、
いいかえると太陽や月は天にあって安らかで、草木や穀物は地に根付いて伸び栄える。人も謙虚で柔順な心をもって公正に行えば大いに繁栄するということです。

離為火の反対は坎為水で、どのような困難・苦難にも立ち向かう、徳の高い勇気と信念の人は、やがて尊敬と信頼を得て発展します。このように見事に知性と情熱が花開いた状況が離為火です。

日月は天に付き草木は地に付きとあるように、付くべきところに根付いてこそ伸び栄えます。人も燃えるような情熱で絶大な成功と権力をつかんだときは、知性と明徳の人であることが大いなる繁栄を導く素質です。

あまねく天下を照らす賢人は、不幸な人に涙し、無慈悲や無道に苦しむ人に心を痛め、それらの元凶を果敢に排除する勇気と力をもちますが、最終的には元凶にさえ寛容であろうとします。これは深いですね…目には目をと繰りせば、元凶はなくならないということですから…

 

〔解説〕坎為水と離為火

易経の上経三十卦を締めくくる対照的な二つの卦です。

坎為水は立ち直れないような困難や危難に陥った状況ですが、離為火は反対に燃え盛る炎や華麗に咲き誇る花のように、輝くような繁栄をもたらします。

正反対な状況ですが、困難を克服し、大いに伸び栄える人の資質や条件は同じです。

知性と明徳に培われた勇気と信念は大きな力となって繁栄を導き、知性と明徳に根付いた寛容さと公正さが、あまねく天下を照らす賢人の道だと説いています。
困難を克服するのも繁栄を導くのも人の力であることは同じで、他を思いやる心と豊かな知性に培われた明徳の人、勇気と行動力の人が成し得ることだと二つの卦が説いています。

しかし権力をもつと往々にして様々なアンバランスを生み、やがてパイプが詰まるように行き詰まることを警告しています。

繁栄も衰退もいつかは収束しまた繰り返すものですが、過ちは繰り返さず、困難に備え、少しでも繁栄を永く保つために、心や肉体や精神を鍛え磨いて、養心養生に努めることが大切なのですね。そして明徳と勇気と行動力を備えた人たちは、大事な城を守る石垣となるのでしょう。

上経の終わりは、優れた人材の育成が危難を克服して繁栄を導く底力となるのだと結んでいます。やはり人なんですね~~

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