E-18易経を読む16 〔31〕心が触れ合う関係・恋愛〔32〕変わらぬ平和と安定・結婚

〔31〕沢山咸(たくざんかん)011100触れ合い感応する心・恋愛

咸は感じること。感動や感激、感謝、感涙など、人と人の関係は、感応して心が触れ合うことで親しみ和合していきます。男女の関係では下の「山・100=若い男性」が変わらぬ熱い想いを告白し、上の「沢・011=若い女性」が悦んで受け入れている象形です。ひざまずいてプロポーズをしているような情景ですね。

男性の気持ちが恋愛から結婚に動く時は、相手を理想的な女性と思い、純粋な心で永遠の愛を誓う謙虚さが生まれます。そこで男性の卦が下にあり、女性は待ち続けたその時を感動で迎え、悦んで求愛を受け入れ、共に感応の極みに到達して結ばれるという、恋愛のハッピーエンドの情景です。

陰陽の男女が感応し心を通わせて固く結ばれるなら、以後の人生は揺らぐことなく順調に進むとあり、それは平和な社会生活のベースとなる人の心の働きです。

沢山咸は恋愛に例えていますが、陰陽が感応して万物が生まれる、天地の道理を説くものです。

易経の後半、「下経」は沢山咸に始まりますが、平和な社会をつくるには、上下の心が感応し通じ合うことがとても重要ということで、下経の筆頭におかれているのでしょう。

互卦は天風姤(てんぷうこう)111110で、願望成就の喜びや、結婚披露宴のような晴れ舞台の訪れを示します。…しかし男女が出会い、恋をして結ばれても幸せになる人ばかりではありません。

天風姤には、例えば悪女や功利的な女性と知らず、外見や色香に迷い理想の女性と思いこんで結ばれるなら、築いた人生が足元から崩れ始める危険があるという戒めが含まれます。女性ではなく男性にも置き換えられますが…

でも易は、心が通じ合う真実の感応かどうかを見分ける方法まで教えます。

恋愛中の男性は、女性を喜ばすために高価な贈り物や豪勢な食事を奮発して頑張りますが、結婚して男性が大きな志に向かう時に、資金や労力など色々と困窮して苦労することがあります。そこで因果関係を説く錯卦の山沢損(さんたくそん)100011は、一転して若い男性が上に若い女性が下になる象形で、苦労する男性に自分のできる限りを貢ぎ、損をしても相手に奉仕する女性の姿を示します。
真の感応と愛情による結びつきかを測るチェックポイントなんですね。そしてこのような損得抜きの奉仕は「損して得を取る」結果になり報われるだろうとあります。

このように心が通じ合い感応して結ばれた二人が熟年になり、平穏無事な熟年夫婦となっていく象形が次の雷風恒(らいふうこう)001110です。そこで賢人は変わらぬ平和と安定を築くために、ありのままの人の心を素直に受け入れることの大切さを察するのです

 

〔32〕雷風恒(らいふうこう)001110不変の道は変わらぬ結婚生活に学ぶ

恒は恒常や恒久で、常に変わらず安定している結婚生活に例えます。

熱烈に感応して結ばれた若い男女も、やがて歳を取り熟年の夫婦になります。

上の雷・001は熟年の男性で、下の風・110は熟年の女性です。恋愛と違い、結婚生活は男性上位で、女性が支える立場に転じています。
恋をして結ばれた二人は幾多の山や谷を乗り越えて、今は平穏無事な日常を送り、人生晩年に向かっている状況です。

感応して男が女を求める時はとても低姿勢で謙虚ですが、結婚すると段々に男がふんぞり返るようになるもので、結婚生活はそれで円満ともいえます。

しかし、日々変わらぬ安定した生活を退屈と思うようになると、かつて感じた刺激やときめきをもう一度味わいたいと思い、波風を立てる方向に心が動きだします。さしずめ不倫の危機ですね。

このような状況や気分は誰にも訪れる時がありますが、純粋に感応して結ばれ、苦しい時を支え合ってきた夫婦は、心が揺れても誘惑に打ち勝ち、危機を退けて、変化はなくても安定した生活を壊すことがないのです。

恒久不変の平和の道は、円満で安定した熟年夫婦のように、様々な危機に遭遇しても、それを退け、初心を忘れず変わることがなく、欲望や妨害するものを果敢に排除していくことだと、互卦の沢天夬(たくてんかい)011111が注意を喚起します。

因果を説く錯卦の風雷益(ふうらいえき)110001は、損得抜きで尽くし奉仕した妻(下の者)に益(利益)を戻す象形で、妻は「損して得(益)を取る」結果です。今当たり前に「損益」という言葉を使いますが、意義があると信じて奉仕する金品や労力の損失は、やがて報われて利益=恒久の安定・平和を導くことができるということで、その根底には上下が心を通じ合わせ、支え合う感応の心があると説いています。

そこで賢人は自分の立場をしっかりと定め、揺らぐことがないよう心掛けるのです。

 

〔解説〕

沢山咸と雷風恒の二つは、男女の恋愛と結婚に例えていますが、上下の関係、支配者と被支配者の関係についても同様であるといっています。心が触れ合い感応して結びついた関係が協力して築く世界は、安定した平和な社会を造りあげる土台となるのですね。

因果関係を説く山沢損と風雷益も同様で、人が誰かのためにできる限りの奉仕ができるのは、その相手への強い信頼と深い愛情があるからで、その土台には心が触れ合い通じ合い、感応し合って結びついた純粋な思いがあるということです。

恋愛中は男性がへりくだって女性を悦ばせ、結婚して時間が経てば男性がふんぞり返り、女性が支えることで平和が保たれます。でも平和に慣れると刺激がなく退屈と思う時があり、心がときめく誘惑に揺れ動くこともあります。しかし心を通じ合わせて結ばれ、苦難を支え合ってきた関係なら、そのような危機を乗り越えられるだろうということで、この二つの卦は心の触れ合う平和な社会を造る根本を説いています。

しかしこの頃は女性上位が多くなったのか志の持てない男性が増えたのか、女性の生き方も多様になって、安易に離婚する人も多いように感じます。

共に白髪の生えるまで、変わらぬ安定を保つことが結構大変になっているのかもしれませんが、心の通じ合いが強い人の結びつきにあることは、今も昔も変わらないのではないかと思います。
古い考え方かもしれませんが…

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