E20易経を読むー18〔35〕日の出・上昇の勢い〔36〕日没・夜明けを待つ

35〕火地晋(かちしん)101000日が昇る・上昇と発展へ向かう勢い

「晋」は「進」で、進むこと。地000の上に火101がある象形で、暗闇に光明がさすように辺りがどんどん明るくなる日の出の勢いを示します。

徳の高い賢人・「火」に、衆人・「地」が柔順に従って進めば未来は光明に包まれるとも読めます。

暗い夜が明けて昇る朝日には強い勢いがあり、その勢いに従い積極的に仕事を引き受けて働けば、順調に進展して認められるだろう。大いに力を発揮して活躍することだ。時の利に恵まれているのだから…と説いています。

しかし朝日は日の出というように日の始まりで、未経験の一日に向かうために、様々なリスクを想定することが大切です。四大難卦の一つ、水山蹇(すいざんけん)が互卦にあり、障害に遭遇したら焦らず熟慮して、極力平易な道を探らないと、八方塞がりに陥るぞと警告します。そして因果関係を説く錯卦は、水天需(すいてんじゅ)で、何にでも飛びつかず、本当に求めているもの、待望するものを吟味していくことで、有意義な一日となることを示しています。

そこで賢人は人々が希望に導かれる朝日のように、自分の内面を磨き徳を磨いて自らが輝く光となる努力をするのです。

日はやがて必ず沈むことを知って、与えられた時を有益に活用する時を示しますが、次の地火明夷は火地晋を逆から見た綜卦で、日没を表しています。

 

36〕地火明夷(ちかめいい)000101 日没・夜明けを待つ・逆境を乗り切る

明夷は明が夷(やぶれる)意味で、「火」101が「地」000の下に落ちる象形です。

明が夷(やぶれる)とは、明るさや光が消えること、火が消えること。朝が来ればまた夜が来て一日が終わりますが、夜を安息の時でもあり、不用意に動けないのは当然です。そこで明夷は暗愚な者「地」が、有能で明徳のある人「火」を抑え妨げている状況とも読みます。

賢人は闇夜のように勢いが衰えた時は、危険が及ばないように有能さを隠し、外見は平凡で愚かな人に見せて夜明けの時を待ちます。そしてどのような逆境の時も、内面の徳を磨き、希望の光を絶やさないのです。

朝の来ない夜はなく、雪に閉ざされた冬もやがて雪解けの春が来るように、苦しみや悩みを解消する時が来ると、互卦の雷水解(らいすいかい)が教えます。

そして因果関係を説く錯卦の天水訟(てんすいしょう)は、理不尽な状況に陥っても、勢いのない時や弱い立場の時にいたずらに争いを起こしても勝ち目がなく、

また公正な裁きにより勝つことができても、そこで得た名誉や利益などは永続性がないのだと説きます。そこで、日が昇るような勢い・時の利が味方する時を待って行動することが賢明なのだと静観し忍耐する時を教えます。

〔解説〕

日の出は、今日という日を希望に導く光となって人の活動を後押しし、また日没は人の活動を収束させ夜の眠りに誘います。

夜は安息の時であり、また次の日の活動力を充電する時間です。特に古代の人々には日の出と日没は、時を知る重要な目安であったでしょう。

火地晋と地火明夷は日昇と日没の「時」の処し方を示しますが、日の出のような勢いのある時と、衰退し逆境に落ち込んだ時とも捉えます。

日の出の勢いがある時は大いに活動して繁栄に努力することが大切です。しかし勢いに慢心せず、明確に望む方向や目的意識を持ち、極力リスクを避けて進まないと、思いがけない障害に苦しむことになると警告し、日没後のように勢いが衰えた状況では、闇雲に動かず、まして争わず、危険を避けて力を蓄え、また日が昇る時を待って備えることだと諭します。

人が発展に向かい行動する時には、目的や願いに向かう意欲と共に、極力リスクを避ける冷静さが必要ですが、何より勢い=時の利が成功に導く大切な条件なのだと気づかされます。

又反対に、衰退し逆境に陥っても、日はまた昇り、温かな春が来ると励まされます。そのために時の勢いを知って、時に応じる処し方が大事なのですね。

発展と終息の道中にある時の変化を知ることが、希望の光を生かし、希望を失わない秘訣なのだと改めて思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です