E21易経を読むー19〔37〕風火家人 信愛〔38〕火沢暌 背反

〔37〕風火家人(ふうかかじん)110.101家内安全と信愛について

家人は文字通り家の人です。家族が心を一つにして寄り添えれば、たとえ貧しくても家庭は心から親しみ安らぐ場所になるでしょう。その中心は夫婦=父母であり、特に一家の主婦の役割は大変大きく、家庭の中の女性の立場はとても重要です。

母と娘や嫁などの関係では、主婦である母(風)に娘や嫁(火)が素直に従う円満な関係があれば、外で働く夫であり父や息子を支え励まして一致協力することができます。

家内安全・安泰とは家族が心を合わせて外敵から家族を守り、苦しみの時にはその悩みを共有して、心を通わせ寄り添い集う家庭の有り様だといいます。

外の社会でも、信愛で結ばれた同志はとても大切です。一人で苦難を乗り越えることは容易ではありませんし、逆に守るべき大事な人がいることが、短気を抑え忍耐力を養います。家人は火の上に風が吹く象形です。小さな火を丁寧に消さないと大火になる危険があり、日常の小事を侮ると大事に発展していきます。

信愛で結ばれた家族や仲間など守る者があると、自ずと用心深く慎重に行動するようになるものです。このような関係は共に協力して苦労を乗り越えていく過程で生まれ、乗り越えたときに真の信愛で結ばれた家族、同志となります。

家内安泰の原則は、大きくは組織や国の安泰にも通じます。

そこで賢人は日常の小事が大事を呼ぶのだと知って、言葉や行いを慎み、嘘を言わず、常に原則に従って行動するのです。
互卦は火水未済(かすいみさい)、錯卦は雷水解(らいすいかい)で、用心して火を消しても後からまた新たな火種が生じるように、発展を目指していけば苦労の種は尽きないことを示します。
例え人に背かれ、理不尽に泣いても、短気に争いに走れば命まで危険にさらすのだと警告し、苦難の時は家族や同志を思い、また忠告を聞き、助け合って忍耐して春を待てば、やがて雪が解けるように解消していくだろうと諭します。

 

〔38〕火沢暌(かたくけい)101.011背反しながら協力する矛盾した関係

暌は背くことで、家内安泰の「家人」の卦を逆さまにした象形です。

火101は上に昇り、沢011の水は低きに流れて上下が和合しないことで、嫁と小姑がいがみ合うような、家内で女同士が背きあう関係に例えています。
内部にいがみ合いや反目する状況があれば、一致団結して行う事業や大きな問題には取り組めません。
錯卦の水山蹇(すいざんけん)は、強行すれば往く手を塞がれて行き悩む。極力平坦で安全な道を進めと警告します。

例え話ですが、「ある時、繁盛している団子屋の長男が嫁をもらいました。店は長男の妹が看板娘で頑張っていましたが、そこへ美しい兄嫁が参入したことで、妹は兄の愛情もとられた上に、店も兄嫁に仕切られてしまうのではと疑心暗鬼になります。そこから小姑の兄嫁いびりが始まり、兄嫁も負けじと反目し、それぞれに雷同するものも現れて家庭の中にいざこざが絶えなくなりました。当然険悪な雰囲気はお客にも伝わり、売り上げにも影響します。結局志を立てて家業を守る長男を苦しめることになりました。そこでようやく反目する二人も家の危機と気付きます。反目しつつも長男の思いを察し、家を守るという共通の意識でこつこつ働くうちに、徐々にお互いを家族として認め合えるようになっていきました」…いがみあっても共通の利益や危機に対しては協力もできる…このような矛盾した関係を示すのが火沢暌です。

家の危機に気付き、とりあえず火種を消すことができましたが、このような関係では、日常のことはできても、大きな事業に発展させるのは難しいでしょう。

例えば会社は社員に共通の利益をもたらしますが、内部では足の引っ張り合いがあることはよく耳にする話です。内部のもめごとが会社が傾く原因になるともいいます。

そこで賢人は志を変えず付和雷同しないように努めるのです。

 

〔解説〕

風火家人(ふうかかじん)と火沢暌(かたくけい)は、どちらも家族や家庭の円満の大切さを説いているのでしょう。
火沢暌の例え話の中で、嫁に長男がつき小姑に姑などがつけば家の中はぐちゃぐちゃになります。

団子屋の長男は賢いですね。家業を守ることは家を守ることと、身をもって示して反目する二人に気付かせましたから…
風火家人の卦は、男たちが困難に遭遇したときに理性的に対処する道を選ばせるのは、家族が心が通い互いを大切に思う気持ちに支えられているのだと説いています。
例えば夫が会社で左遷など不当な処遇を受けたと仮定します。感情的には夫は辞めてやる!と思いますが、家族を守るために唇をかみしめて耐え、妻や家族は夫を理解し励まして協力して共に耐え抜く状況です。
そうであればやがて公正な人間の手で復権する時が来るだろうという結末ですが、やはり家内安全はともに困難を乗り越えて、信愛を築いた円満な家族がもたらすものなのでしょうね。

神社で家内安全を祈願する時にそのことを思い出すことにします。

 

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