E22易経を読む-20〔39〕水山蹇・立ち塞がる障害〔40〕雷水解・雪解け,解決

〔39〕水山蹇(すいざんけん)010.100障害に行き悩む時は安全を優先する

蹇は字が示すように足を塞がれることで、往く手を険しい山や大河が塞ぎ遮っています。

前途を障害に阻まれ行き悩み、戻るにも戻れない八方塞がりの状況で、まさに「前門の虎・後門の狼」です。
易はこの水山蹇を四大難卦の一つとしており、焦って険しい山道に入ることや無理に急流を渡ろうとすれば命を危険にさらすのだと諭し、このような大きな障害に遭遇したら、まず止まることが最も大切なのだと説いています。

例えば夢と希望に溢れる新天地を目指す旅にも未知の危険や困難があり、未経験の苦労や難問に遭遇することが想定できます。

多数で動けば尚更意志を統一することが大切ですが、困難に遭遇して背く者や頑固に逆らう人も現れ、内部が混乱すれば益々危険が増して、多くの命が危うくなります。

水山謙の因果関係は火沢暌(かたくけい)で、内部で背きあえば水山蹇となることを示します。

そこで賢人は常に困難に直面した時に備え、内面の修養を重ね徳を積み、人々と心を通わせることを心がけるのです。

卦辞に東北は良くないが南西は良いとあります。東北は留める山を表して困難を示し、反対の南西は打開する道としているのでしょう。また東北に進むことは逆回りであり自然の流れに逆らう動きにも思えます。賢人は何より困難に遭遇した時に、慌てず焦らず止まる冷静さがあり、遠回りでも安全で平易な道を選ぶのだと説いています。

 

〔40〕雷水解(らいすいかい)001010雪融け・打開する道

解は解けることで、解消・解決を表します。固い氷が融け、雪解けの水は勢いを増して流れていきます。季節は早春の時を表して、動物は冬眠より目覚め、植物は地上に芽を吹き、あらゆる生命の活動期が訪れたことを示します。

悩み苦しんだ問題が解決し、往く手を阻んでいた障害が解消して、前進し発展へ向かう機会が到来します。易は環境や状況に恵まれることを「時の利」といい、成功や発展の最も重要な条件としています。

このような時にこそ果敢に切り開くために、行動を開始しなくてはせっかくの好機を生かせません。春が来たと喜んで、種まきもせずに怠けていれば秋の収穫は望めないのです。

次に来る厳しい冬を超え、困難を耐えぬくための蓄積を得るために、それぞれの役割に励み、機会を生かし大いに活動しなくてはなりません。

雷水解の反対にあるのは風火家人。家族・同志が心を合わせて困難を耐え抜くならば、必ず雪解けの春が来るのだという因果関係を示しています。「時の利」を生かすことがとても大切なのですね。

 

〔解説〕

水山蹇は足止めされて行き悩み、危険に陥って戻ろうにも戻れない八方塞がりを示す難卦です。その原因は家族や同志の絆のはかなさにあり、内部に揉め事を抱え背きあう関係のままでいれば、やがて蹇に陥るのだと諭します。

逆に雷水解は、困難な時にこそ家族・同志が心を一つにして支え合えるならば、やがて問題や悩みは解消し、厳しい冬を乗り越えて雪解けの春が来ることを示します。

二つの卦に共通する「時」の使い方は、いつの時代にも共通しています。

環境や状況が厳しい時は無理に動かず、強引に進まず、安全を優先する…

環境や状況が好転した時は、気を緩めず大いに活動し、必要な行動をして好機を生かす…

「蹇」は時の利が味方しない時、「解」は時の利に恵まれたときの対処法です。

良い時も悪い時も対処の仕方で逆転することがあり、正しく対処する方法の中で最も大切なことは「時」を知ることでしょう。
易は待つ時・生かす時・乗じる時・過ぎた時・動く時・止まる時・我慢の時…などの時を示し、そこに合う動きを教えます。

人や時代の時の盛衰は、易が得意とする自然の巡りそのものですが、人は自然に逆らい時の使い方を誤って苦労をすることが多いように思います。

時の利・人の利・地の利があり、このバランスが整えば順調に発展し成功に導かれるといいますが、時を知る素朴な感性を磨くために、我を抑える謙虚さが必要なのですね。

 

 

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