E-30 易経を読む-28〔55〕雷火豊 豊かさの中の衰兆〔56〕火山旅 人生は希求の旅

55〕雷火豊(らいかほう)001.101 豊かさの中の衰兆

豊は文字通り「豊かさ」を示し、その繁栄は盛大で、まるで王者のように満ち足りている状況です。まさに日が中天にありますが、これ以後は徐々に日が傾いていく状況です。

満ちれば欠けるのは自然の摂理で、天地は四季の移り変わりに従い、消長・盛衰していくものです。

繁栄に至るまでの苦労と努力の成果は、それを守るだけでも相当のエネルギーを必要とするでしょう。体力も消耗しているはずで、このようなときは、現状を守り、土台を固めていくことが大切です。
まして、さらなる拡張拡大や新規の事業に挑むことは厳しく戒めることとしています。

震=雷と離=火は仲睦まじい中年の男女の姿ですが、そろそろ衰えが始まる年代です。火(101)の上の雷(001)とは、やがて変動が起こることを示します。

互卦の「沢風大過」は荷を積み過ぎて傾きかかけた船を示します。因果を説く錯卦の水沢節は、節度・節制・節操で、中庸の大切さを説いています。

そこで賢人は、繁栄の時にこそ様々な問題や争いの種となることを洞察し、規則やルールの中で「公正」を基準にして、賢明に対処し解決をしておくのです。

 

6〕火山旅(かざんりょ)101.100 人生は希求の旅

旅は文字通り旅のことですが、山(100)の上の火(101)が示すのは、日が山頂にあるうちに、安全を確保することを警告しています。例えば日のあるうちに宿をとらないと危ないぞということでしょう。

旅が今のように楽しみや慰安となったのはまだ最近のことです。

古代の旅は、新天地を求め、また現状の発展をめざし、また窮地を逃れるために、まさに命がけの覚悟で「水杯を交わし」臨んだものと思います。

現代と違い、見知らぬ土地、未知の人々の中で過ごす不安は想像を絶するものだったでしょう。そのような不安な状況は人生の中でも起こります。転居や転職などもその一つです。

人生は希求の旅であるといい、様々な変化と出会いの中で、夢と希望を求めて時を経ていく、我々の人生に重なります。

時には流浪し流転する苦難もあり、良い人に出会い、良い場に行き着き、人生を大いに進化発展させることもあります。

旅に目的があるように、人生の旅も理想や志を忘れずに保って行けば、困難を乗り越える力となるでしょう。

「郷に入っては郷に従え」という格言がありますが、これはまさに旅における戒めです。

錯卦の「水沢節」も節度・節操を守り節制し、原則に固執せず柔軟に状況や立場に応じ、正しい道を求めなさいという「中庸」の道の教えで、互卦はバランスを崩して船が傾くことを警告する沢風大過です。

そこで賢人は、内には信念や理想を守り、外には行動や言動に注意し、時を読み、場に応じて速やかに明快に対処するのです。

 

〔解説〕

雷火豊は、豊かさや繁栄に満たされている時を衰兆の始まりと捉え、変化変動に備えておくことを説き、火山旅は長く険しい人生の旅を無事に生きぬくための教えが説かれています。

共に注意すべきこととして、限りない欲望がバランスを崩し、船を沈め、屋台骨を傾ける原因になることを、互卦の沢風大過が警告をしています。

易の説く現代は山頂からの下りが始まっている時期です。大きな国や組織も、小さな個人も、抱え過ぎた荷の整理をする時期と思われます。欲望は発展の原動力ですが、果てしない欲望はすべてを崩壊させる原因にもなります。

苦労を乗り越え発展へ努力する時があり、無理無駄を果敢に省いて終息へ向かう時があります。
また新規の挑戦や拡大拡張をする時期と、現状を見直し果敢に果断して、再生から結実へ歩む時期があります。

現状を正しく見て、時に応じて節制や節度を重視し、再生へ向かい、次世代に残すものを見極める時が来ているのではないでしょうか。

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