E33-易経を読む-31〔61〕風沢中孚.・誠意誠実は通じる〔62〕雷山小過・分相応に

61〕風沢中孚(ふうたくちゅうふ)110.011誠意誠実に行えば通じる

中孚は中に孚(誠)ありで、誠実さに満ち溢れていること。

内面に徳があり虚心である人が、誠実に人を導いていく象形です。

孚は親鳥が「孵化」させようと卵を温める様子で、同じように愛情と誠意をもって行えば、必ず人に活力と喜びを与えるだろうと説きます。

風が沢に吹きわたり、草や木が風になびく様子であり、そよ風が優しく吹きそそぎ、少女は髪をなびかせ風に身を任せて悦ぶ姿も連想します。

誠意誠実を尽くせば危機を脱して何事も成就することを説き、また利害や損得ではなく、心で結ばれた深い愛情を象徴する卦です。

互卦は〔27〕の山雷頤で、養心養生を促し、そして綜卦は次の雷山小過で、分を知る謙虚さを説いています。

賢人はこの卦を見て、常に心を養い、誠実に温情をもってものごとを決着することの大切さを知るのです。

 

62〕雷山小過(らいさんしょうか)001.100日常を守り分を守る

小過は少な過ぎることで、〔28〕沢風大過と対になる卦です。

発展の勢いは少なく、自己中心な小人は多くなり、内部に分裂の危機が潜んでいるため、発展を願い大事に挑む時ではありません。日々のことを丁寧に処理して、野心を抱かず分を守り、穏やかな繁栄を持続することが大切だと説いています。

山上の雷雲は暗転の兆候です。また大きな音を立てて飛ぶ鳥は狙われるように、上昇を望むのは時勢に逆らう行為であるといいます。

反対にある卦が風沢中孚で、孵化したヒナを守ることが雷山小過に課せられた責任とも読めます。

互卦は沢風大過で、野心を抱かず抱え過ぎるなと警告します。

分限を知り、分を守り、器に合うように生きることで繁栄を持続することが小過の教えです。

そこで賢人は、時勢に則し、行動を慎み、人の悲しみに同調し、節約に励み、災いを招かないように計らうのです。

 

〔解説〕

いよいよ、易経の旅も後二卦を残すのみで、最終章に近づきました。

終息の勢いは益々強くなり、野望は叶わず、大きなことを成す勢いもありません。

この二つの卦は、穏やかな終息の時を迎えるために成すべきことは、誠意と愛情をもって孵化を促す親鳥のように、次世代へつなぐものを慈しみ守り、また分を守って多すぎる荷を降ろし、安定を持続することに努めることだと説いています。

陽極まれば陰に転じ、陰極まれば陽に転じる易の巡りから、人は発展の勢いがある時には野心をもち、大いに働き動くことが必要ですが、終息へ向かい、いよいよ陰が極まる時期は、野心を抱かず、守るものを明確にして、備えることを促します。

そのために風を読み、雲行きを読んで変化を察知し、分を守り、耐乏生活や避難の時に備え、敵を作らず、恨みを買わず、誤解を招かないよう、慎重に行動することの大切さを説いています。

夜の闇も冬の寒さも、心通う愛情に包まれ、必要な備えがあれば平和で穏やかに過ごせます。志や野望もまた、日が昇り春が来れば大いに発展させる時が来ます。

言い古された言葉ですが、改めて大切なことだと思いました。

 

 

 

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