前回の観光に続き、旅を象徴するのが易経56番目の火山旅101.100です。
文字通り旅を象徴する卦です。現代は「旅=楽しい」というイメージが強いのですが、易経の書かれた時代に旅から連想するものは、それこそ水杯を交わして出発するような難事業でした。
交通手段や止まる宿舎なども整っていない上に、見知らぬ土地や見知らぬ人々の様々な言葉の違いや風習の違いの中で、旅人の不安と孤独は想像を絶するものだったでしょう。
「旅」の卦の旅人から連想するものは、居の定まらぬ不安定な状況や愛する者から離れる別離と孤独の寂しさです。
旅に象徴される孤独で不安定な状況にある時は無理な行動は禁物ということでしょう。
そこで身を守るためには「郷に入っては郷に従え」と万事受け身で対処することの教えです。またある所でたまたま厚遇されても、旅の途中であることを忘れずに目的や理想を守っていくことが大切だと説いています。
人生は旅のようでもあり、その途中では孤独や不安や失意に襲われることがあります。そんな時は無理に動かず受け身に徹して対処すること…それが「郷に入れば郷に従え」という教訓を生みました。
そして目的や理想を忘れずに守っていけば、やがて道が開け前に進む時がくるという、長い人生の旅にも例えられます。
現代の旅といえば、余暇を楽しむ娯楽的な意味合いが濃いと思いますが、「郷に入れば郷に従え」という言葉は、現代にも生かされるべき「安全な旅」のルールではないでしょうか。
知らない土地や知らない人々の暮らす中を旅するのですから、その土地の人々が大切にしているものや習慣を冒さず、極力迷惑をかけず嫌うことをしないというのが最低のマナーと思うのです。
日本へ来られる旅行者向けに注意を喚起する立て看板が各地で立てられているようですね。我々も旅する時は、郷に入れば郷に従う意識を持ち、その土地や人々を敬い親しみ、様々な体験を通して良い思い出となる旅をしたいものです。