B8 八卦の誕生ー1

言葉も不完全な古代のこと、人々は太陽に照らされる時と、日が沈み闇に包まれる時の繰り返しの中で、「明と暗」を実感し、「昼と夜」を感じ取りました。また、手の届かないはるか彼方に広がる「天(空)」にきらめく月や星々を仰ぎみ、周囲や足元には様々な樹木や草木が生え、そこに人や動物たちが生きている「大地」を実感していました。

天の太陽が地に及ぼす光と闇の明暗の世界、天と地、光と闇、明と暗という対照的な二つの絶対的なものは、やがて「陽と陰」という概念を生み出しました。
天地・明暗は陽と陰の概念となり、陽と陰に始まる天地が男女のように交わって大自然を創造するのであり、天地の働きは絶対的なものであると信じられました。では天と地はかくも離れているのにどうして結びつくのか…と考えたところ、天から雨が降り注いで大地を潤おし、雪が降ると大地は深い眠りにつき、地響きとともに大地が隆起して山となり、山ができれば自ずと沢が生まれ、沢には心地よい風が吹きわたります。ある時には雷鳴が轟き、山は火を噴き、恐ろしい風雨に川が溢れて水浸しにもなります。あふれ出た火の川もやがて鎮まり、積もった灰は固まり土となっていきます。全ての現象は天の恵み、天の怒り、天の慈しみとなって地に及び、滅びと誕生を司り、草木が芽生え、動物たちが生まれ育まれる天地の力なのだと実感します。
このような全ての天地の働きを八つの要素に凝縮して八卦が生まれました。
陽と陰に始まる天・地、水・火・雷・沢・風・山の八つの要素を八卦といいます。
さらに天(陽・父)と地(陰・母)に人(陰陽・子)が生まれる「天・人・地」の現象を三つの記号(爻)で表します。啓山式に陽を1、陰を0で表すと下記のように表せます。
天111 沢011 火101 雷001 風110 水010 山100 地000
これは神話のような八卦の誕生説ですが、古代人の素朴で純粋な英知を感じ取れます。数としての論理的な易の成立過程からみても、八卦は間違いなく天地・大自然の働きを凝縮するものです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です