B16 易における気

 紀元前の古代、人々は人間の力の及ばない天地のはたらきを実感するために、天の意志、神の意志を必要とし、王や神官や巫女によるご宣託を拠り所としていました。
このような天の力・神の力を表して「気」という文字が生まれました。
気は空に雲の流れる「气」と、生命を育む「米」を合わせた「氣」が元の字です。
生命を創造する源である天に浮かぶ雲の下に、生命を養う穀物の代表的な米を加えた「氣」は、生命の活動力の源泉を表す文字です。氣が気へ変化し、「気」のはたらきを人はエネルギーともいいます。元気は文字通り元(源)の気。大気・空気・気息(呼吸)など、生命に欠かすことのできない源泉といえるものは「気」で表されます。
根気・覇気・勇気などは物事を成し遂げるために重要な気の力で、人は見えない気の力、はたらきを信じ、実感しています。五行は五気に表して木火土金水の相生相剋を追究し、人体への影響・病気を研究して東洋医学を発展させました。
合気道・ヨーガなども修業により、充実した気を養う方法を体得する実践術として発達したものと思います。このように気は肉体を動かし心を動かす力であり、性質や気質に影響し、時には邪気のように人を滅ぼす力にもなります。
気を出すと元気・精気が促進して強い精神力が引き出され、気が退くと委縮して弱気になります。人の活動の根本を支配する気の力は、目に見えないが確実に有るエネルギーの源泉といえます。易はこのように目に見えない気の働きを、陽気・陰気の二気により、目に見える「象形」に表しました。
南宋の朱熹は、万有を支配する原理「理」に対して、万物を形成する元素を「気」として理気二元論を説いて宋学(新儒学)を樹立し、朱熹らにより編纂された易が現代に伝えられています。

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