B19 陰陽の相対的はたらき〔中・中庸〕

陽極まれば陰を生じ、陰極まれば陽を生じて進化衰退していく循環が、無限に繰り返されているのが自然界です。
明と暗、昼と夜、寒暖などの陰陽の変化は季節を生じますが、人にも季節のような生命力の変化があります。生命力を元気とすると、動き続ければ元気は明らかに衰退します。そのため一定の安息とエネルギーを補給する静の時を必要とします。人が眠るのは元気を維持するための健全なはたらきです。
このような動と静のはたらきも相対的な陰陽の関係です。
天地・昼夜・動静・明暗・寒暖・発展衰退・分化統一・発動終息……
など万物万象は互いにぶつかり合い引き合って時の流れの中で変化し、進化衰退し循環する陰陽の相対的な関係です。
易は相対的な陰陽が生み出す健全な有様を〔中〕という言葉で表します。
時には陰が勝り、時には陽が勝りますが、自然のはたらきはその時々に新たな進化と次の生命を生むための絶妙な中の実現を行っています。
真中でも折半でもない〔中〕とは、易が探究し続けた〔中庸〕の世界でもあります。
陰陽の変化による無限の循環は中の実現の連鎖といえるでしょう。
種→根→芽→茎(間引き)→枝葉(剪定)→花→花枯れる→結実(果断)→完熟→落下(次世代の種)→葉枯れる→土に還る→次世代の種育む…この一つ一つが健全な中の実現です。
中庸を人の世界に表現するのは難しいのですが、私は、その時々に応じ建設的な進展を促し、新たな命につなげる「実現」の世界と考えます。次世代の命を生む陰陽の発展的なバランスは、決して折衷や折半ではありません。
生命の存続のための実現でなければ中とは言えず、もし支配者が目先の私利私欲に従えば確実に滅亡を速める実現になるでしょう。
発展と繁栄を極めても必ず衰退する時が来ます。そこで繁栄を永続するために賢人はさまざまな策を講じてきました。
『中庸』という書物が著され、王の学問の筆頭に位置付けられたのもそのためと思います。
古代から不足や抑圧に苦しむ人々は変化を望み、多くの戦いや革命をして発展してきました。半面ひとたび繁栄をつかむと変化を望まず、かの始皇帝の詔書にも「始皇帝の世は千万世に続く」とあり、永久に繁栄が続くことを望みます。でも相対する関係がある以上、必ず亡ぶ時が来ることを歴史が証明しています。
現代でも既得権益を永続したい人たちは変化を望みません。しかし勇敢かつ賢明に変化の時を受け入れ対処しなければ、その繁栄は衰退へ加速するのが道理です。そしていつの時代も、相対する不足と抑圧に苦しむ多くの人々(民)がおり、変化を望んでいることも確かでしょう。

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