E25 易経を読む-23〔45〕沢地萃 繁栄と防衛〔46〕地風升 発展上昇の道

〔45〕沢地萃(たくちすい)011.000 人が集まれば繁栄する。有事に備える。

萃は「地000」の上の水場「沢011」の象形で、水場には草が群生することから、聚(しゅう)=集まるという意味に用いられます。

古代から水場には人や物が集まり、そこで物品のやり取りがはじまり、賑わい繁栄していきました。それは砂漠を旅する人々がオアシスを求めて集まり、様々な交易が行われ、やがて街となって繁栄していくような状況です。砂漠のような過酷な地で渇きをいやす水場はまさにオアシスです。人々は天の恵みと感謝したに違いありません。

人が集まればそこには良い人も集まれば好ましくない人間も集まってきます。色々な物が集まり交易が発展して繁栄する中で、安全のために秩序が求められ、ルールや制度が創られ、警護をする人が組織されます。

水辺に草が茂るように、沢地萃は、人々をひきつける水場であり、ひきつける人物に例えます。真の成功者、実力者となる人は、繁栄に慢心せず、常に天地や祖先の恩恵に感謝し、万一の事変に備えを固め、堅実に財を蓄積し、優れた人を養い育てるのだと、錯卦の山天大畜(さんてんだいちく)が示します。

そこで賢人は謙虚に繁栄を感謝し、益々徳を磨き、常に良い人材を養い育て、油断することなく有事の備えを固めるのです。

沢地萃は次の地風升と共に大変勢いのある吉卦です。

この卦は「鯉、龍門に昇る」と言われ、掛け軸などの「鯉の瀧昇り」の図柄に描かれて、受験や昇進の願掛けに大吉とされています。

 

〔46〕地風升(ちふうしょう)000.110 発展し上昇するために。

升は昇で上昇の勢いを示します。「地000」の下の若い芽「風110」がまさに天に向かって伸びようとする象形です。新芽は大地に育まれてすくすくと伸びていくことから、徳のある良い指導者に従っていけば若い力が大いに伸び栄えるだろうと説いています。

前の沢地萃は人が集まれば自ずと繁栄し、繁栄の後は天地に感謝し、良い人を育て養うことが賢人の務めとありました。

次の地風升は良い地(指導者)に恵まれて若い芽(若い人材)が育ち、やがて発展向上していくとあります。良い人に良い人が集まり、良い人は良い人を育てる…発展と繁栄の根本は人であるということなのですね。

伸びようとする若い芽は、一足飛びに飛躍を望まず、良い指導者に付き着実に実力を身に付けて努力すれば、自ずと発展の時を得る。
しかし人生は予期せぬ出来事が起こりやすいから、何が起きても作為的に動かず、偽りなく誠実に精進することだと、錯卦の天雷无妄(てんらいむぼう)が示します。

賢人は草木の成長は徐々に高大になることを悟り、発展の時に備えて実力を養い磨くのです。地風升は成功の条件を 1、実力2、後援者3、時の利と三つ上げています。

 

〔解説〕

沢地萃と地風升の卦は易経の中でも繁栄と発展の道を説く吉卦です。

沢地萃は、人が水場に引き寄せられるように、人が集まってくれば自ずと繁栄の道が開けるのだと説き、地風升は草木が伸びていくためには良い大地に恵まれることで、良い指導者に出逢うことが大いに発展向上する道だと説きます。

「鯉龍門に昇る」の象とは、鯉が瀧を昇るのは相当の勢いが必要で、力強くたくましい鯉に例えて、真の実力者は発展し繁栄することを表すめでたい図柄と思います。

人が集まり繁栄に導かれるのは、その人物が真の実力者であり、繁栄の力で多くの人を養い育てる賢徳の人だからで、そこで育てられた人材はやがて有事のときの強い味方となり、強固な防衛力となるのだということでしょう。

真の成功者・実力者はただのお金持ちやお大尽ではありませんね。

成功のために必要なことは、実力と支援者と時の利の三つ、そして真の成功者は実力と財と人材をもつ人だといいます。もし今が不遇でも嘆かず、発展の好機に備え、良い指導者を求め、実力を養う…二千年の時を経ても、なるほど…とうなずいてしまいます。

 

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