E-27 易経を読む-25〔49〕沢火革 革命・改革の道〔50〕火風鼎 安定の道

49〕沢火革(たく..かく)011.101 革命と改革の道

革は革(あらた)める事で、革命や改革、革新の道を説いています。

上卦の沢(水)は、下卦の火と対立する関係で、古いものを新しく改めるには対立する関係を壊すことから始まります。その破壊の混乱を乗り越えてこそ建設的な未来を築くための革命が成立するのだと説きます。

私欲を捨て誠実に正しい道を進み、自ら無知蒙昧を啓き、寒泉を掘り当てる経験をしてこそ、行き詰まりを改める道が開きます。蒙昧を開き寒泉を掘り当てる経験とは、悩み苦しみの根元を正しく知るために自ら良い師を求めて啓蒙に励み、心の奥底に潜む清冽な思いや志に行きつくことです。

ただ勢いで思想に感化したり、頭だけの知識や理屈のみで革命に走れば、建設的な未来などは望めません。

志が大事であることはいうまでもなく、例え勢いと理屈で改革を可能にしても、平和や安定をもたらすことはなく、やがて迷走して長く暗黒の世界に落ち込んでいくことになるでしょう。

未来の建設が長く平和と安定をもたらすための革命の成功を鼎革(ていかく)といい、真の革命の道としています。次の卦、火風鼎(かふうてい)は革命の後に安定をもたらす未来の建設の過程を示します。

 

50〕火風鼎(.ふう.てい)101.110 鼎革(ていかく)は安定への道

破壊と革命の後に、新たな未来の建設が始まります。鼎(かなえ)は三本足で神に捧げる供物を煮炊きする大きな祭器で、その小さなものは香炉などにも用いられました。

「鼎(かなえ)の軽重を問う」という言葉がありますが、古代の鼎は国の権威を示す象徴でした。ましてその軽重を問うことは無礼であり、敵対する人物とみなされても仕方ありません。
鼎は三本足ですが、三は、奇数(陽数・動数)の基礎となる数で、発展をもたらす数を表します。三本の矢、三角形のピラミッド、くさびなどもそうですが、三は安定した動きを示す最小の数です。
鼎の1は根元数を表し、取っ手の2は陰陽を表す偶数の基本の数を示し、足の3で「立つ」という動きが生まれます。また3は天地人を包括する数でもあり、万物の順調な進展を示す数です。

革命の後に平和と安定の世界を切り開くために、元凶を除いて行き詰まりを打開し、無理無駄を取り除くために、果敢に決断決行することは生みの苦しみです。そこを乗り越えていけば、やがて水が地を潤うすように発展していくだろうと、鼎革(ていかく)の道を説いています。

 

 

〔解説〕

沢火革(たくかかく)と火風鼎(かふうてい)の二つの卦は、古代中国を中心とする東アジアの易姓革命が背景にあります。古より国を治める王は天命を受けて王となり、代々世襲で受け継がれました。
王が天帝の命を受けるという大義名分のもとで命を革めることを易姓革命と言い、当然王家の姓が変わります。

天帝の意に反すれば革命を起こして他の有徳の王が引き継ぐことを肯定する、儒教的な思想が背景にあります。

鼎(かなえ)については、古代の夏王朝の初代禹王は、天帝に供物を捧げるために九つの鼎を鋳造して国の威信を示したと伝えられます。やがて夏を滅ぼした次の殷の湯王はその鼎を継承してその威信を示し、殷を滅ぼした周の武王も革命成立の証として夏・殷の鼎を継承しました。
天帝の命を受けて行われる易姓革命の正当性を、鼎の継承を革命成功の象徴とすることで「鼎革」という言葉が生まれたのでしょう。

語源はともかく、前回の「沢水困たくすいこん」の干上がる苦しみから「水風井すいふうせい」へ転じて、ようやく清冽な寒泉を掘り当てて新たな未来を建設するための道筋が開けることを、この二つの卦から知ることが有益と思います。

八方ふさがりの苦しみの中で、心の奥に潜む清らかな泉(初心や志)を掘り当てることができれば、必ず改革への道が開き、新たな未来を開く力が生まれます。
大きな困難を乗り越えて光へと誘う道筋といえましょう。

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