E9易経を読むー7 よき友や同志の絆は成功や繁栄を導く〔13天火同人〕〔14火天大有〕

〔13〕天火同人(てんかどうじん)111101 社会的なつながり・良い友をつくる

同人は同じ志を持つ人=同志で、同人誌などの語源で、慶応義塾と並び称せられた小石川の同人社の名称にも使われています。

外に旺盛な発展の勢いがあり、内面に知性や明徳を秘めて、豊かな社会性、発展性を示します。人の性質に当てはめれば、知性と実行力を備えた人物といえます。類は友を呼ぶといい、利害なく広く交流して良い友を求め、自分の人脈をつくりまた志を共有すれば、社会的な勢力となり、ひとたび志を実行する時には強いきずなを発揮します。

反対に、狭い範囲で縁故知人のつてを頼ることや、頼まれて断れず…といった状況では、目的を共有する意識は希薄になり、しがらみに縛られ決断力が鈍ることにもなります。

賢人は志を成就するために、始めは辛く孤独でも安易な道を選ばず、人を見分け良き友良き同志を求めるのです。

互卦:天風姤(てんぷうこう)111110 注意すること…慢心の戒め。正しく交流する
発展し成功した後に遭遇する思いがけない災いに注意を促し、成功しても慢心せず土台を固めよと戒めます。

成功すると色々な人が寄ってきますが、良い気になってやり手の美女とねんごろにでもなると、徐々に籠絡されて土台が崩れていくぞという警告です。

本来天風姤は奥深い卦で、交際のマナーや正しい交流のあり方を説いています。簡潔に言えば非常識な人の接近は要注意だという戒めです。(詳しくは44天風姤で)

錯卦:地水師(ちすいし)000010 因果関係…良い集団は勝利へ導く力
人は群れることで社会的な力をもちますが、良い集団となるには良いリーダーが不可欠です。人徳のある人の下には人が集まり、聡明で実行力のある人がリーダーとして育ち、強い戦力となりますが、良い同志に恵まれ社会的に力のある集団となるのも同様で因果関係にあるものです。

綜卦:火天大有(かてんだいゆう)101111 天からみれば…大いなる繁栄をもたらす

天に輝く太陽は、強い光で隅々を照らします。光り輝く強い盛運であり、順調な未来を表しています。志を高く良い友、同志を得て、社会的な力をつけていけば大いなる繁栄が訪れるでしょう。

 

〔14〕火天大有(かてんだいゆう)101111 発展の輝きと盛運を示す

大有は大いに有つ(たもつ)ことで、天上に太陽が光り輝く真昼の明るさです。

その光は隅々を照らし、その輝きに包まれて大いなる盛運が訪れます。
また豊かな実りに恵まれる状況であり、円満裕福でものごとが順調であることを示します。強運が味方する今こそ、積極果敢に行動し実行して大いに発展していくことを促します。

賢人はこのような繁栄の時こそ慢心せず、善悪を見極め有害なものを遠ざけて、長く盛運を保つよう努力するのです。

 

互卦:沢天夬(たくてんかい)011111 注意点すること…私欲を戒め悪い物を見極め省く
夬は決断や決行で、未来の発展のため果敢に決断し、決行することを促します。

ただし行う時は私利私欲を戒め、溢れる水を田畑に回すように、下に厚く恩恵が施されるよう計らことが大切です。善悪を見極め、無用無駄を除き、調和と公平を目安に行動すれば自ずと繁栄が訪れるのです。

錯卦:水地比(すいちひ)010000 因果関係…助け合い信頼し合い平和が保てる
水地比は有能で聡明な指導者の下に多くの人が安住し、同様に火天大有の繁栄は未来の安定をもたらします。

しかしこのような恵まれた状況でもやがて優劣や順位などを比較して不満が芽生えるのが人の社会でもあり、公平に親しんでもいつかそのような時がくるものです。長く平和を保つためにも強い信頼関係が大切なのです。

綜卦:天火同人(てんかどうじん)111101 天から見れば…同志のきずなが繁栄をもたらす
私縁に頼らず、高い志と聡明な実行力で結ばれた友の絆は、やがて同志となり、集団となって社会的な力を発揮するでしょう。よき友、よき同志が集い事を行えば、大いなる繁栄に導かれるのです。

〔解説〕

天火同人は繁栄を導くために同志の結びつきが大切であると説き、火天大有はそうしてもたらせられた盛運を長く保つために、公平であることはもちろん、善悪を見極め、有害なものは果敢に排除してこそ、安定が保たれるのだと説きます。

高い理想や志を一人で成し得ることは困難です。そこで良い仲間を求めるのですが、その時に身近の義理や縁故に頼ることや、頼まれて仕方なくという状況では、同じ目的のために向かう強い気持ちが生まれず、さらに苦しい時に団結することが困難になる可能性も高まります。

賢人は安易な道を選ばず、孤独に耐えても志を高め合える友を求めます。やがて志を共有する同志へと発展していけば、共に喜び、苦しい時も乗り越える強いきずなが生まれるでしょう。

成功や繁栄も衰退する時がきますが、安定を長く保ち、また困難を超える力や、改善する力の根幹となるのは、やはり人の力なのだと教えられます。良い友、良い同志をもつことは心強くそれだけでも豊かで幸せなことです。そのためにはまず自分が志を持つということが大事なんですね…

E8易経を読むー6 和合・発展と安泰〔11〕地天泰  離反・閉塞と打開〔12〕天地否

11〕地天泰(ちてんたい)000111上下和合して発展し安泰となる
天が下にあり地が上にある天地逆転の象形ですが、天の陽気は上昇し、地の陰気は下降する性質があります。
天と地、陽と陰が結びつくことは、万物生命が生まれるための大原則です。そこで地天泰は上下和合して発展する「安泰の道」を説く卦です。

上が下を慈しみ下は伸び伸びと発展を目指して活動する象形で、理想の社会ですが、陰陽逆転すれば次の天地否となり、上が私腹を肥やして民が苦しむ世の中ともなります。
表裏一体、天地逆転も真なりです。上下和合の安泰と上下離反する天地否は、立場や状況により見方も変わります。

人物でいえば、内面に溢れるほどの意欲をもってよく働き、外面は謙虚で柔順であるために、人に好かれ上にも可愛がられるので、一生食べるには困らないでしょう…とあります。半面年齢が増すと次第に従順でおとなしい性質が目立ち、良い人には違いないのですが、良い人で終ってしまう可能性もあります。

賢人は上下が和合して事が成就するため、時と目的に応じて創意工夫し利便を追求して下を助け働くのです。

互卦:雷沢帰妹(らいたくきまい)001011上下離反も初心を全うすれば吉となる
女性を柔順の陰とすれば、この卦は若い女性が力のある中年男性に逆にアピールする象形で、私利私欲や功利的な結びつきを示します。そこで凶・否運であるとしますが、道ならぬ恋もやがて皆が認めるようになり、全うすれば吉となるのです。
安泰の卦の中に注意を促す互卦なので、例え優遇されても努力を怠らず、慢心すれば否運になるぞと戒めているのでしょう。

錯卦:天地否(てんちひ)111000 因果関係・上下離反と打開の道
天の陽気は上に、地の陰気は下にいくことから、上下が容易に結び付けない困難な状況です。上は私腹を肥やして民を顧みず、民は不平不満を溜めてやがて徒党を組む団交の始まりです。上の立場からは困った状況で、徒党を組めば低きに流れて否運に陥るぞと警告します。
しかし現代は若い女性が力のある中年男性を射止めるのも当たり前で、まさに逆転の天地否時代です。でも終わりを全うすれば吉となるのも同じです。
打開の道は、初心を貫き努力を続け全うすることです。やがて結実するように、実力を認められ安泰の時を迎えます。

綜卦:天地否(てんちひ)111000 安泰の構図も時とともに逆転する
始めが順調なら…始めが苦労なら…という違いでは人の未来はわからないもので、安泰でも否運に陥り、否運でも安泰へ向かう道があり、天から見れば時の巡りなのです。

12〕天地否(てんちひ)111000 結実の道は容易ではない。初心を全うして吉
天地否は111000、地天泰は000111で上卦と下卦が逆転した象形です。 地天泰が内面に陽気を秘めて謙虚で柔順な人ならば、天地否は若い時に苦労の連続でも実力を磨きやがて頭角を現す人々でもあり、実力もないのに虚勢で飾り、したたかに翻弄する人々ともなります。前者はやがて安泰になり、後者はいずれ否運となればよいのですが…

社会は支配層が私腹を肥やして、民が困窮する象形で、自然界は花が枯れて根幹の枯渇が進む中でようやく結実していく状況です。このような上下の結び付きが容易ではないことを否運とし、困難でも持続し全うすることで打開するのだと説きます。
困窮した民は一揆(ストライキやデモ)に走りますが、支配層から見れば民が徒党を組むことは大変困るので、この卦を凶としたのも頷けます。
実のところは安泰も否運も表裏一体で見方を変えれば、同じ目安なのです。

賢人は人々の苦しみを見て、行いを慎ましくして難を避け、金品(高禄)に惑わないように努めるのです。

互卦:風山漸(ふうざんぜん)110100 順を踏み着実に進化する道。実力養成。
地天泰の互卦、雷沢帰妹が順を踏まずに上位を望む卦なら、天地否の互卦の風山漸は順を踏み、着実に力をつけて進化伸展することを示します。
例え否運に苦しんでも、初心の志を忘れず着実に力を養えば必ず成功に導かれると説きます。

雁のひなは、親鳥に随い徐々に飛ぶ力を覚え、練習を積み重ねてやがて親や仲間と共に千里を渡ってゆきます。また遠い山の木の生長は日々目には見えませんが、いつの間にか枝葉を伸ばし太くたくましく育っていることにも例えます。

逆境や苦境を嘆いて努力しなければ否運となり、黙々と努力して実力を養えば道は開け安泰となることを示します。

錯卦:地天泰(ちてんたい)000111因果関係・和合と安泰の道
否運を嘆かず、努力を続ければやがて安泰の時が来る。

綜卦:地天泰(ちてんたい)000111天から見れば時の巡り
春の草木の成長の結果が秋の結実をもたらす。時のめぐりを信じてその使命を全うすればやがて発展の時が訪れる。

〔解説〕

互卦は卦の中身であり、注意すべきことを説きますが、安泰の卦、「地天泰」の互卦「雷沢帰妹」は、恵まれていても努力なくして実りを追えば否運となることを示し、否運を示す「天地否」の互卦「風山漸」は、苦しくとも初心を持続して実力を養えば安泰となることを示します。

地天泰は温かな春にすくすく伸びていく若い幹であり、天地否は秋の結実に向かう老成した幹です。春は気候や環境に恵まれて栄養も十分ですが、花が枯れて実がなる秋は、相当根も疲れて栄養も十分ではありません。でも実がならなければ、次世代の種子を残せませんので、草木は頑張っているのですね。

そのような見方から、安泰も否運も時の巡りであり、時に応じて注意すべきこと、努力するポイントを説くものです。
季節のように時代は巡り、順調な時も苦しい時も必ず終わりが来ます。
安泰も否運も表裏一体、因果関係にあり、その時に応じ、その立場に応じて、慢心せず、あきらめず、初心や志を全うすることの大切さを説いているのでしょう。
現代はまさに困窮する民が増加して貧富の差が増す天地否時代の様相です。
民の苦労は続きそうですが、上の立場の方々が民と苦労を共にする賢人であってほしいと願うばかりです。

E7易経を読むー5 目標を実現するために 〔9〕風天小畜 〔10〕天沢履 

〔9〕風天小畜(ふうてんしょうちく)110111 柔、剛を制す。実力養成

畜は蓄え養う力で、小畜は蓄積が少なく留める力が弱いこと。溢れる発展の意欲(陽気)がありますが、経験や実力に欠ける少年時代に例えます。力もなく勢いだけで虎の檻(危険)に飛び込めば食われてしまうでしょう。

そこで柔軟で吸収力の高い少年時代こそ、内面の徳(陰の力)を養うことが大切と説きます。力が弱い者が強い者を留めるには力の勝負ではなく、陰徳で向かうしかない。その陰徳とは、まず学問を治め社会の秩序や先人を敬う礼などの知識を養うことで、短気に走ると失敗するという教えです。でも実行しなくては道は開かず、そのジレンマに苦悩する状況を切り開くときの手引きとなる卦です。賢人はその状況をみてその文徳(秩序や礼儀や学問知識など)を磨くのです。

互卦:火沢暌(かたく・けい)101011 注意点・内実が整っていない
暌はそむくこと。一軒の家で女同士がいがみ合う様で、内部や内面にいざこざが生じていること。そんな矛盾した状況では大事に挑めません。日々コツコツと積み重ねる中で、矛盾は解決していく。反目する二女性も外敵に対しては家を守る共通意識で立ち向かうので、徐々に調和して収まっていくという例え。

錯卦:雷地豫(らいち・よ)001000 結果・やがて発展の機が来る
豫は与える、楽しむで、半面怠る、あらかじめという意味もある。
ようやく動ける時が来る(春の発芽)。蓄積したエネルギーを大いに発散して伸びていくとよい。心に余裕も生まれ楽しみも多いが、油断すると思わぬ失敗も招く。あらかじめ予期して警戒を怠らないことだ。

綜卦:天沢履(てんたく・り)111011 虎の尾を踏むが…
果敢に虎の檻に飛び込むが、うっかり尾を踏んでしまう。しかし食われることはないだろう。なぜなら虎を敬い礼を尽くしていることを虎は知っている。志は遂げられるだろう。

 

10〕天沢履(てんたくり)111011 虎の尾を踏むも食われず。実現の道

履は履行する、履く、踏むなどの意味があり、履行することから、志を実行し、実践する状況を説く「実行の法則」です。「虎の尾を踏むも食われず」とあり、虎はさまざまな危険の象徴です。志を遂げるには、危険を恐れては実現できません。うっかり虎の尾を踏むような危険の中で、どう行動すれば食われずにすむのか…。

履は力のある天に沢が柔順に従う象形です。目上や経験者などの先人を敬い、素直に教えに従い、失敗から教訓を得る姿勢があれば、食われるどころか逆に守られるでしょう。賢人は上下の立場を守り、礼儀正しく、秩序を守るのです。(君子は上下の位を明確にし礼儀を定め、秩序を正しくして治める)

 互卦:風火家人(ふうか・かじん)110101 家族に守られるような安心
家人は家庭の人家族のことで、特に主婦の働きを示す、良妻賢母の象形。
どんな困難な状況でも夫を支え、家族共に苦労を分け合い支えてゆく姿です。
心が通じ合う温かな家族のように、円満で丸く収まるだろう。

錯卦:地山謙(ちざん・けん)000100 繁栄の後も謙虚で公平であれ
謙は謙虚、謙遜を表します。公平で功をひけらかさず、私欲や慢心もない。賢人は満つれば欠ける月を見て悟る。
そのような人なら、一層才能も光り存在も輝くだろう。豊かな時に他に奉仕できる人こそ余裕の人で、繁栄しても謙虚で公平な人は、その才能は輝きを増し、存在も光り、自ずと人も従うだろうと。

綜卦:風天小畜(ふうてん・しょうちく)110111 実力を養い実現する道を開く
実力もなく志を遂げるのは困難だ。危険を覚悟して進むためには、社会の秩序や礼儀を知り、様々な学問知識を養うことだ。実現のために短気を起こさず内面を磨き実力を養うことが大切だ。

解説
「風天小畜」は何かを実行する時の心構えを説き、その実現のために必要な力を養成することを説きます。「天沢履」は実力を養成し秩序を守って望めば、人の縁に守られて実現することができるという、「実行の法則」です。

特に若い時ほど力不足のまま大きな力に立ち向かおうとしますが、それは虎の檻に素手で飛び込むようなもの。しかし勇猛な虎は、礼と秩序を踏まえ、必要な知識を持って近づけば、逆に守ってくれる存在にもなります。
万一尾を踏んでしまっても、そのような失敗を教訓にして励めば許されるでしょう。という厳しい現実社会を虎に例えた話です。

夢や目標を本気で実現したいなら、まず必要な知識を修め、先輩目上への礼儀や、社会の秩序を守ることが大切で、その努力は厳しい現実を果敢に切り開いてゆくときの守りとなるでしょう。

夢や目標を描くのは簡単ですが、実現の道はとても厳しく、気持ちで頑張るだけでは難しいでしょう。

目標は自分との約束です。それを果敢に履行するため、必要な力を養う時間を惜しまず、社会の秩序や礼儀を学ぶことも、同時に大切です。そうしてこそ人の縁に恵まれ、人に必要とされ、いざという時の守りとなるでしょう。さらに実現の後も謙虚さを忘れないことで一層輝きを増して終わりを全うできるのです…というお話です。

 

E6 易経を読むー4 〔7〕地水師〔8〕水地比 集団は戦う力、和合と派閥の成立について

〔7〕地水師000010 集団は有能なリーダーを得て戦う力となる

子供が成長すると次第にグループをつくるようになりますが、人は群れをつくることで社会的な存在となります。

師は群れ・軍団のことで、軍隊の編成単位を師団というのはこの卦が語源。

集団を動かすためにはリーダーが必要になりますが、そこで師は指導者で、教師や師匠などの名称にもなりました。

柔和な五陰は集団の王様のような存在で、信頼する有能なリーダー(二陽)に軍団の指揮を任せます。どんな組織も部門を動かす有能な部下とトップの信頼関係が不可欠で、良い集団には良いリーダーが育っています。

前回の「天水訟」は争いの原因でしたが、続く「地水師」は集団と戦う力について説きます。

賢人は水を湛えた大地のごとく、衆人を潤す「正しい目的」のために軍団を率いて戦うのです。気に食わない相手や弱者を力で制圧する軍団であってはなりません。

互卦 地雷復000001 注意すべきこと。一陽が育つのを待つ。
一陽来復の語源。目にかけた若い人材が育ち、行き詰まった時の戦力となる。徐々に力が付くのを待てば勢いを増して活躍するだろう。初心を忘れず、焦らずその機運を待つとよい。下の一陽が二陽に上昇変化してリーダーとなる。

錯卦 天火同人111101 因果関係・良き仲間と団結する
同人は、類は友を呼び志を同じくする仲間ができること。同人誌などの名称の語源。良い同志を得て大いに発展するが、縁故に頼らず義理に流れず、妥協しないで広く仲間を求めて真の同志を得る。それが自身の社会的なつながりとなる。

綜卦 水地比010000 天から見れば・助け合い和合して吉
比は二人が並びあう形。そこから他と比べる意味もあるが本来は助け合うこと。信頼し合い上下が親しめばやがて勝利して繁栄(五陽)するだろう。しかし徐々に初心を忘れ他と自分の優劣相違などを比較して不平不満が生まれる。集団が発展すると派閥ができることを比という。

〔8〕水地比010000 助け合い和合するがやがて派閥が生まれる

比は人が並び助け合う意味で、集団で戦い勝利した後、上下が親しみ和合して平和が訪れます。

しかし集団が発展すると志の異なる人も寄ってきます。多数の人が集まれば他と自分の待遇や優劣相違を比較して不平不満が生じるもので、こうして組織の中に派閥が生まれます。子供たちの世界にも似たようなことが起こりますね。

同志が集まり集団が発展しますが、後から仕方なく寄ってくる者はそれなりの扱いをされることも。この卦は「来る者を拒まず去る者追わず」という例えでもあり、集団になると敵対する勢力も生まれます。そこで賢人は上下分け隔てなく親しみますが、例え離反するものがいても、逃げ道を残し追い詰めることはしないのです。

互卦 山地剝100000 過去の教訓・現状の守るものを明確に
危うい状況で無理をすれば揉め事や革命の勢いに押されて破滅する。陰謀や重病などが隠れていることにも例え、教訓は余力のあるうち潔く引いて復活の時を待つ。また災いの種に気付き早く刈り取ることでもある。

錯卦 火天大有101111 因果関係・大いなる繁栄
大有は天に輝く太陽の象形。盛運であり裕福で満ち足りている状況。上下分け隔てなく親しみ、去る者は追わず志を保ち続ければ、隅々まで光がいきわたる。賢人は有害なものは遠ざけて、誠実勤勉に努力を続け繁栄を持続する。

綜卦 地水師000010 天から見れば・良き同志が集えば強い集団となる
戦うために集団が生まれる。同じ志を持つものが集えば、自ずと信頼関係が生まれ、良い指導者も育つ。また良き指導者となる人は同志を集めて力をつけていく。

 

☆解説
共通の意欲や目標は同志となり集団化する力です。群れになると人は社会的な存在になり、そこにはおのずとルールや役割が生まれます。
子供も成長に従い親から離れ学校という社会生活が始まります。文字通り先生がいてクラスにはリーダー的存在が浮上し、互いが信頼関係にあると様々なクラス運営もスムーズに運ぶでしょう。

集団は戦う力であり、勝利してさらに結束し、同志を増やして発展していきます。隆盛をみてしぶしぶ後から寄ってくる人たちさえ、賢人は快く迎え入れますが、不満に思う者もいて徐々に不協和音も生じてきます。

発展することは分化する陽の働きですから、どんな集団も発展すれば必然的に分化していくものです。また集団の中で在籍年数や、実績や好き嫌いなど色々な理由で比較しあい、さまざまな力関係で派閥が生まれます。

もし派閥が不平不満から敵対勢力として台頭すれば、内部は混乱し衰退を加速させるでしょう。

賢人は「来るものは拒まず、去る者を追わず」の姿勢で、離反するものを果敢に排除しますが、とことん追い詰めれば恨みを生みます。そこで四方を塞がず、寛容に逃げ道を残しておくのです。

集団や会社などの組織つくりにも参考になるのではと思います。

E5 易経を読むー3 〔5〕需要と要求 〔6〕矛盾と訴訟

〔5〕水天需010111 待望して得る喜び=需要
需はもとめ待つ意みで、需要です。 小さな子供も成長するとさまざまな要求をするようになります。
下卦の天は全て陽で、豊かな生命力は育ちざかりの児童少年時代に例えます。
食欲旺盛な子供時代は大いに食べさせなさい、制限ばかりすると表面は従っても裏に貪欲な性質が育ちます。反対に上卦の水は危険が前にあるから時を待ち辛抱して待つことの戒めです。
「儒」はその時が来るまでじっと待つこと、時が来たら存分に要求に応えることが人を伸ばしていくために大切です。本当に欲しいものは辛抱して待てば喜びが来ることを「儒」の卦は教えます。
きっとくると思えばその時を楽しみに待てるのですね。
賢人は日が昇る時が来るまで泰然として待つのです。

互卦101011火沢暌〔38〕注意すべきこと
暌はそむくこと。下卦少女(小姑・妹)・上卦中女(兄嫁)で二女同居の卦。女同士が陰湿にいがみ合い反目しあう状況。内部に揉め事が起こることを警告します。そんなときは大きなことをやってはいけない。
矛盾した状況でも小さなことをコツコツやればやがて同じ利害目的で認め合えるようになる。

錯卦101000火地晋〔35〕結果・因果関係
晋はすすむこと進展です。上卦が火、地上に太陽が昇り希望にあふれる卦。柔順な態度で努めると頭上に光指すことを示し、万事順調で働くほどに認められ、苦しんだ人も上昇していく機運。おおらかに自信を持って進める状況がくる。

綜卦111010 天水訟〔6〕喪失や矛盾は争いを生む
天から見れば正しく儒(求め)に応じることは、ゆったりと大らかな心を育てる。心に葛藤や矛盾が生じることは、奪いあう心を育て、争いを生む。そして本当に望むものが遠ざかる。

〔6〕天水訟111010 矛盾と妨害に葛藤し争いを生む 

誠実な心でいても他人に妨害されて理不尽な扱いを受ければやむを得ず争う状態になります。
しかしどんな時も折り合う道を模索すること、また時を待つことも大切。
配分や役割などの不平等も不満が大きくなれば訴訟にも発展します。
最後まで争えばよいことはありません。たとえ勝っても争いで得た勝利は長続きしないでしょう。
公平な仲裁者に委ねるなど、賢明な対処を説きます。
賢人は争いが起こらぬよう事の始めから対処するのです。

互卦110101 風火家人〔37〕心がけるべきこと
家人は家庭の人。とりわけ家族の中心である主婦の働きを示し、上の長女に中女が従っているために円満で丸く収まる、いわば良妻賢母の象形。
各々が自分の役割を知り共に苦労をして、心を通じ合い親しむ温かな家族の情景でもあります。妨害や矛盾を怒り争うことで平安は来ない。
苦しい時こそ家人の支えが大切で、また守る者があれば破滅的な行動を抑えられる。

錯卦000101 地火明夷36 結果・因果関係
夷はやぶれる意味で、火が下に落ちる、賢明なものが傷つき害される卦。
太陽が地の下に没した暗黒を表す。明徳を敢えて愚か者の顔に隠して着々と内面の充実を図ると良い。苦難の中で磨かれた実力はやがて輝く時がくるだろう。

綜卦010111 水天需〔5〕天から見れば
本当に必要なもの、欲しいものは容易に手に入らないものだ。望みを持ち静かに待つ心境で、雨が降り潤す時を信じて待つ。自己中心な欲望や要求は、争いの火種となるだろう。

☆「水天儒」と「天水訟」の卦は、子供が成長していろいろ要求するようになる時の与え方に例えます。 食べ盛りの子供に、常に制限をつけると、隠れて食べる、他人の物を取る、嘘をつくなど内面に姑息な心が芽生えます。
待つことは喜びを得ることと、子供の時期に体感させること…
そのために与えられる時は惜しみなく与えることが大切と説きます。愛情も食事も与える時は存分に、そして苦しい時は家族が支え合いしのぶように、信じ合う心を育てることが根底にあります。
子供のころに待つことで喜びを得る体験や習慣はとても大切です。
逆にむやみやたらに与えすぎることは本当の欲しいものを見えなくもします。

社会は正しく秩序を守っていても、不公平や制約を受けることがあります。
人を妬み羨み他人の物を欲しがることも同様で、それらはみな争いの火種となります。

秩序=歯磨きを厳しく言い、矛盾=かつ虫歯になるから甘いおやつは禁止!となると、子供は他家で甘いおやつをむさぼり、隠れて食べるようにならないでしょうか?
週に一度の休日のように必ず訪れる喜びがあれば、次の休みを楽しみに待ち、この秩序を信じる心が育つのだということもあります。

社会の道理としてもそうですね。

需要は待望しても得たい求めであり、真に求めるものを供給することで、日が昇るような発展があります。あり余る供給は感謝を忘れ、また不平等なら奪い合い争って衰退します。
日が昇る喜びを経験すると今は暗闇でも信じて支え合い辛抱して朝日を待てるでしょう。

需要と供給の在り方を教えられ、矛盾は争いの火種となることもわかります。でも社会は矛盾に満ちているものです。
そのような中でも支えあい信じあえる人(家人・仲間)がいれば辛抱もでき、また共に朝日を見る時が来るのですね。

次回は〔7〕地水師〔8〕水地比…同志が集まり次第に集団化するように、成長した子供は次第にグループを作ります。集団になると優劣や利害を比較して、徐々に派閥が出来上がってきます。人は集団になると派閥をつくるというお話です。